横内さんが言う通りの方法で、家の庭で大根を育ててみたら、言葉を失うほどおいしかったんですよ。

福島 僕は福島屋の経営者として、食べ物の中心は、植物にあると考えてきました。特にこだわるのは、野菜の味。本当においしいものを食べると、人は素直に嬉しいと感じるし、その気持ちは豊かな暮らしの根幹を支えるものだと思うんです。つまり、僕が考える理想的な食というのは、文字通り、生命を養う意味でも、健康的な豊かさを志向する意味でも「養生」につながるものなんです。高度経済成長とともに、手間をかけない農業、生産性の高い農業を私たちは農業の進歩だと思ってきましたが、今、農業には、おいしい安全を選択するためのパラダイムシフトが起こりそうな気配を感じています。

 

横内 ジャーナリストだった私が様々な問題を取材したり、市民活動を立ち上げたりする中でたどり着いたのが、安全で、本当においしい野菜や果物の新しい栽培技術でした。野菜の栽培に肥料も農薬も使わない「自然農法」の研究者や実践者は多く存在しますが、多くの収穫は望めないと言われていました。私が立てた仮説は、作物に適した土壌環境があれば、おいしい野菜がたくさん育つのではないかというものでした。ここでいう土壌環境というのは、作物の根の周りに存在する共生微生物のことで、共生微生物という概念は、「自然農法」「自然栽培」にはありません。植物は光合成によって作られた養分(糖分)の半分を、根から放出してしまいます。理由は、土壌微生物に養分を与えるためです。すると、ある微生物は植物にミネラルを供給し、ある微生物は空気中の窒素からアミノ酸を合成して植物に送ります。作物と相関のある土壌微生物の環境を整えてあげれば、肥料を与えなくても勝手に育つというのが、Halu(ハル)農法なんです。

福島 僕も長年、家庭菜園を無肥料でやってきた経験があって、横内さんの理論が腑に落ちたんです。さっそく家の庭で、横内さんが言う通りの方法で大根を育ててみたら、言葉を失うほどおいしかった。見た目は曲がってて、太さも市販の半分ぐらいの大根なんだけど、なぜこんなにおいしさが際立つんだろうと感動しました。僕自身、全国の有名な生産者がつくったものを食べてきましたけど、どれよりもおいしかった。それで決意したんです。横内さんにはさらにHalu農法を発信してもらって、マーケットニーズと結びつけるのは僕の仕事だなって。全国に生産者が広がってHalu農法でつくった野菜ができたら、私たちのお仲間の皆さんで販売してもいいと思っています。

 

横内 そう言っていただけるとありがたいですけど、福島さんの頭の中から泉のように湧き出るアイデアに、果たして私の頭が追いつくだろうかという一抹の不安はあります(笑)。ただ、私自身がHalu農法でつくった野菜や果物の生産量を増やして、一番の生産者になりたいわけではありません。Halu農法は生産技術なので、挑戦してみたいという人には、技術や情報、家庭菜園用のプランターなどを提供して、ネットワークの中心に私がいて、どんどんその輪が拡大すればいいというイメージを持っています。

 

福島 自然農法や有機農業があって、従来の慣行農業があって、それでいいんです。僕は、どの農業が一番いいと言うつもりはありませんし、多様性を否定する必要はないと考えています。食を通じて、暮らしを豊かにするのが福島屋のスタイルですから、先に言ったように、つくっても養生、食べても養生につながるHalu農法は、福島屋のコンテンツの柱の一つとして、僕が推進力になっていきたいですね。

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